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2011年1月13日木曜日

牛丼

なんか、牛丼の価格競争が激化しているそうですね。
普段あまり利用しないので特に安さに興味もなかったのですが、どんぶりいっぱい200円台ってどういうことなんだろう、、と、老舗のY家さんに入ってみました。

実は私はアルバイトで結構長く、飲食業で働いていました。
レストランやホテルはかなり好きな空間。
しかも料理を運ぶ仕事はかなり好きな仕事。

働いたあるレストランでは、食材や備品の発注も担当、そして自分が営業を担当している時間の売り上げと人件費率や食材の廃棄率などが考慮されて翌月の時給が決まる、というちょっと面白いところで働いていたので、どんぶり一杯200円はどういうことなんだろう、と興味がわいたのでした。


たぶん広い方の店舗だったのじゃないかな。
Y家さん、有楽町の駅前。
ふだんこういうお店ではご飯を食べないので、ちょっと勇気がいりましたが、お腹も減っていたし移動中で時間もなかったので、こういうときこそ利用するものだろう、と入ってみました。


すごかった。。

なんだか、工場みたいだった。
ベルトコンベアーの両脇でひたすらどんぶりをかっこむ人々。。
食事、というよりは、、、

ベルトコンベアーの内側では、
スタッフさん達がものすごいチームワークで牛丼や空になったどんぶりを移動させる。
厨房?をみると、ひたすら休まずに、休まずにです!ごはんをよそい続ける人と、そのとなりでぴぴぴという伝票が印字されて出てくるのに会わせてご飯の上に牛の部分をもる人。。



1秒のムダも無い。。
感じがした。



味わう、なんてここではタブーだ。
流し込め!

食べる仕事をさぼったら殺されるよ!(は大げさですが、怒られる!くらいは感じた)

カッカッカッカッ(みんなの箸の音)、ぴぴぴぴぴぴ、いらしゃいませー、なみー、つゆだくー、はいー!
おまたせしましたー(全然待ってない!)、いらしゃいませー、ぴぴ、ぴぴ、ぴぴ、、がたん、かっかっかっかっ、、、、、、




どんぶり一杯200円でだすというのは、こういう事なんだ。



牛、は、よくもまあこんなに薄く切る技術があるものだ、というくらい、薄かった。
薄い肉がいけないわけじゃないけど。


何を削れるか、どこまで削れるか、どこが無駄か、無駄の徹底排除。。


企業さんは、苦しい時代の今、ただやり過ごすしか、ないのかもしれない、耐えて、削って削って、、ってして生き延びようを必死でやっているのかもしれない。
私は会社を経営した事なんて無いし、経済にだって疎いですから、偉そうな事は本当に言えないんだけど、でも。


ミヒャエルエンデの「モモ」という物語はご存知ですか?
まさに、時間泥棒に奪われている、と思った。
あれも無駄、これも無駄!削れ!削れ!、、、


老舗のY家さんは、一杯の牛丼で”何か”を提供できたから、今日まで愛されて来たのではないのですか。
安いのはそりゃみんなうれしいけど、、
これでいいんでしょうか、、?

何が削れるか、どこまで削れるか、徹底的に無駄を排除して、、
ではなくて、
一杯の牛丼で何ができるんだろう、何がしたかったのだろ、何を提供できるんだろう、
どれだけそこから広がれるかな、ふくらめるかな、繋がれるかな、
つまんない言葉でいうと、付加価値、夢、をのせた牛丼が食べたい。

そう思った。

ごはんには、作った人の気持ちが絶対に必要なのだ。
よそわれたというより投げ込まれた感まんさいのどんぶりを目の前にして、何の感情も無くただそれを口の中から胃に運ぶ。。そんな感じがしたのでした。
確かに食べたのに、、あれ?食べたっけ。。
感情を殺して(無意識かも知れない。スタッフの皆さんはあの忙しさで一生懸命働いているのだから。)機械のようによそわれた牛丼だから、こちらの感情も揺れない。




もうちょっとだけお肉の味がちゃんとするくらいの薄さで、もう少しだけ落ち着いて座れて、
脱いだコートやかばんを置くところがあって(ほとんどの方は、コートも着たままかっこんでいました)、のんびりとまではできなくても、せっかくの牛丼を味わって食べる事ができるなら、
私は500円でもいいと思うのだけど。
どうなのかねえ?


これからの日本の、
豊かさについて考えさせられた
体験でした。